面白いと思えない本は無理して読むな、と言いますよね。
私が実際に途中で読む事を止める事は滅多にありません。
以前も申した気がしますが、どんな本も50頁までは読む主義です。
50頁の時点で、手応えを感じなかったら読書は中止。
まぁでも。50頁まで読めば何某かの興味は湧いてくるもので。
その先はズルズルと読み切ってしまうというのが常。
ですが。今回。100頁まで読んでも面白くならなかった。
殺し屋が大集合した新幹線、って豪華なストーリーなんですが。
何か・・・先が気にならないっていうか、どうでもいいっていうか。
筋立てが突飛過ぎるとか、そういうことではないんです。
そんなの伊坂幸太郎のトレードマークじゃないですか。
あり得ない状況だという事が読書欲を削ぐというのではない。
なんだろうなぁ。だけどなぁ。
読んでて、誰が死のうが勝とうが負けようが。それがナニ?
別にもう、どーでもいいじゃん、興味ないよって気分になった。
伊坂幸太郎ファンの方が読んでいたらごめんなさい。
いや、私も伊坂幸太郎ファンの末席に控えてるつもりなんですが。
ああ。これか。そうか。「伊坂幸太郎の面白さがわからない」って。
そう言う人の意見は「?」だったのですが、何だか理解出来た気が。
母も伊坂幸太郎を読んで、こう言ってました。
「なんか、段々面倒くさくなってきて・・・」
お母さん!今、あなたのおっしゃったことがわかりました。
ええとですね。「王子」という伊坂幸太郎作品に欠かせない悪の化身。
まぁ・・・この造型はよく出来ているんだとは思うんだけど。
道徳的にということではなしに、私としては認め難かったですね。
このタイプの悪を描くならば。魅力も感じさせてくれないと。
「ウザ」っていうので終わっちゃ駄目だな・・・。
人を無条件に魅了する何かがないとこの悪のリアリティは生まれない。
殺し屋たちのドタバタ劇は単純に楽しめますけれどね。
そこに絡む王子の存在が、私には余分だったな。
いや。殺し屋たちの人物像も全てが魅力的に描けてたとは言えない。
出て来なくても良かったような存在感の薄い人物も多かった。
面白くない、というとやはりそれでも嘘になりますよね。
伊坂幸太郎は、言ってしまえばクセになる作風です。
でも、何かねぇ。ちょっと疑問を感じ始めました。
面白さを求めていない時には読めないらしいな・・・と。
自ら面白さに向かって入り込んでいかないと駄目なんだな・・・と。
意外と。間口が狭い世界だな、と。それが良い悪いではなく。
著者の作品としては決して悪い出来ではなくて。
うーん。だから私としては。この失望感の由来は謎ですね。
正直ね。伊坂幸太郎の良さがわからない人は可哀想、と思ってたぐらいで。
問答無用の面白さがある、とずっと評価してきたんですけれど。
「何が面白いんだか、ちっともわからない」と感じる視点も。
それはそれで、至極まっとうなことに思えてきました・・・急に。
現代が舞台なようで。彼の作品はファンタジーで。
一見、自由奔放だけど骨組みがしっかりしていて。
シニカルなユーモアが横溢する中に、「絶対悪」が見え隠れする。
それに対してわかりやすい正義を対抗させないところが魅力。
なんだけれども・・・。
「底知れなさ」が作品から薄れて来ている気がする。
私如きが「なんかわかりやすくなって来た」って言うのは不遜だろうけど。
ドキドキハラハラが全くなかった。
こんなに生命の危険に溢れた狭い電車の中で。緊張感が湧かなかった。
何が起こってもおかしくない状態が当然になり過ぎた世界のマンネリ?
あと。作家が自らの世界観を確立できるようになると。
登場人物が「記号化」する現象がどうしても起きる気がします。
私は伊坂幸太郎に限らず、誰の場合でもそれが苦手なのです。
(2012.5.19)
娯楽作品としては充分に及第作だと思う。とにかく上手いです。
ただ、私には「狙った面白さ」のイヤミが感じられてしまい・・・
キャラクターも特徴はあるけど、血肉を欠いている。
さらに何か「はぐらかされた感じ」も濃厚な残り香を放っている。
ドタバタと喜劇の如く軽いタッチで人が死ぬことには、
私は特に抵抗があったりはしないのです・・・が。
そこに物語なりの必然性は感じ取りたい。それが無かった。
彼が描く「闇」も記号化しつつある印象を受けました。
罵倒してる感じですが・・・私はこれでも伊坂ファンのつもり・・・
本作は楽しんで読んだ人も多いと思うのに、こんな感想ですみません。
きっと。伊坂幸太郎に対する期待値が高すぎた故だと思います。
- 関連記事
-